〜強がりの先にある本心〜

 

 

 

 

 

 

 

夢を見ている時、無意識に「ああ、これは夢なんだ」と気づく場合がある。今が、正にそうだった。私は今、自分が夢の世界にいると確信をもっている。

理由は簡単だ。私は空に浮かんでいて、その下に私とクロノが居るのだから。

――空中刑務所……か。

投獄された者が容易に逃げ出せぬようにと、空高くに建設されたガルディア王国の刑務所。

その通行路となる欄干の無い橋の上を、私とクロノが走っている。

随分と、遠い昔の記憶のような光景だ。

マール誘拐という、言いがかりも甚だしい罪で投獄されてしまったクロノを助ける為、私は刑務所に侵入した。

まるで話を聞かない所長や衛兵を実力行使で黙らせ、ギロチンの露と消える寸前だった彼を救出し、共に脱出しようとしていた時の光景。

まだ大して月日が経っていないというのに、何だかとても懐かしく思えてくる。

――だからだろうか? 今になって、私がこの時の夢を見ているのは……?

「……すまなかったな、ルッカ」

低い声でそう言ったクロノの言葉に、私は胸が大きく脈打つのを感じ、物思いから目覚める。

そして視線をかつての私に向ければ、やはり彼女も同じ様にハッとした表情をして足を止め、彼に振り返っていた。当然だ。実際にこの時、私は今と同じように動揺していたのだから。

「な、何よ、急に?」

狼狽した調子で、かつての私がクロノに訊ねる。その顔は、少し離れた此処からでも十分に認識できる程に赤かった。

けれど、俯き加減で話す彼は、その私の顔のことは見えていないようで、更に言葉を続ける。

「あんまり考えたくはないけど、お前が来てくれなかったら確実に俺は死んでただろう。お前は正真正銘、俺の命の恩人だ。ありがとう」

「っ……ず、随分と素直じゃない? よ、ようやくこのルッカ様がどれだけ偉大か、理解出来たってことかしら?」

――こうして客観的に見ると、笑っちゃうくらいにバレバレね……。

私は思わず溜息をついた。

この時、仲間が誰も居なくて本当に良かったと思う。もし居たら、絶対に私の本心を知られていただろうから。

「そうだな、しっかり理解出来たよ、ルッカは凄いんだって。国家権力に喧嘩売ってまで、俺を助けに来てくれたんだからな。……デカい借りだが、いつか必ず返させてもらうぜ」

「い、良い心掛けね。ま、まあ何と言っても命の恩人な訳だし、最低二倍、いえ三倍は当然よね?」

「ああ!」

強い決意を秘めた微笑と共に、クロノは大きく頷いた。その顔は憎らしい程に格好良く……そして切なくて、今の私には直視することができなかった。

反射的に眼を逸らした瞬間、眼前に黒い幕が下りてきた様な感覚に襲われる。

それに慌てる暇も無く、私の意識は遠ざかっていった。

 

 

 

 

 

 

 

――痛い……こ、此処は……?

全身が痛い。同時に倦怠感が半端ない。頭がボンヤリして、身体が思うように動かない。眼が霞み、殆ど何も見えない。

そんなボロボロの状態である事を認識した私の肩に、誰かがそっと手を置いた。

――誰……?

そう訊ねようとしても、口が動いてくれない。辛うじて首を動かしてその人物を見たけれど、誰なのか分からない。

けれど、次に聞こえたその人物の声で、私はそれが誰なのかすぐに理解した。

「ルッカ」

――クロノ?

「良い機会……なんて言うのも変だけど、あの時の借りを返すのは、今しか無いよな」

――っ!? ちょっと……あんた、何を考えてんのよ?

怒りと恐怖で、僅かに視界が蘇る。

眼に映ったのは、私と同じ……いや、それ以上にボロボロのクロノ。その先には、装甲に大きなダメージを受けているロボが、どうにか立ち上がろうとしている。

少しだけ視線を横に向ければ、蹲っているサラさんと倒れている魔王、更にジール王女と……私達が倒すべき相手、ラヴォスがいた。

刹那、私は今の状況を理解する。そしてこれは夢じゃなく、現実だと気づく。

咄嗟に身体を起こそうとしたが、激痛とクロノの手でそれを制された。

「無理するな。そんな状態で動いたら、本当に死ぬぞ。俺に任せとけ」

――それはあんたも同じでしょう!? 大体、任せるって何を……?

必死で喋ろうとしているのに、全く声が出てくれない。そんな私に、彼が悲しそうな顔で何度も瞬きをしながら言った。

「お前だったら、きっといつか……いつか、ラヴォスを倒せる方法を見つけられる筈だ。…………しっかりな、ルッカ」

――……何よそれ? あんた、まさか……!?

最悪の考えが頭を過ぎり、私はクロノの腕を掴もうと無我夢中で手を伸ばした。

でも、その手が届く前に彼は私から離れ、傷ついた身体を引き摺る様にしてラヴォスへと近づいていく。

――ダメ! ダメよクロノ! お願いだから、バカな真似は止めて!!

声にならない声で叫ぶ私の眼に、涙が溢れていく。その涙で滲む視界の中で、彼がゆっくりと両手を広げ、全身に光を纏っていく姿が映った。

最強の天魔法・シャイニング。クロノが修得したばかりで、まだ一度も成功した事が無い魔法だ。

本来は敵を光のオーラで包んで消滅させる魔法なのに、彼はいつも暴発させてしまい、途中で止めてしまうばかりだった。

「このまま発動させちまったら、多分だけど敵にダメージを与えると同時に、俺自身もダメージを受けると思うんだ。ひょっとしたら、最悪……吹っ飛んじまうかもな」

以前にそう言っていた、クロノの声が蘇る。その直後、周囲が眩いばかりの白光に包まれた。

――クロノーーっ!!

反射的に眼を瞑った私に、一拍置いて凄まじい風圧と衝撃が襲ってくる。勿論、それに耐えるだけの力など残っていなかった私は、呆気なく吹っ飛ばされ、意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あ……」

眼を開けると、視界の先には見慣れた天井があった。

徐々に覚醒していく意識と共に、私はゆっくりとシーツを捲りながら上半身を起こす。

「全部、夢……か」

倦怠感の残る額を手で押さえつつ、暗闇の中で私はそう呟く。

長い夢だった。そして、あまり良い夢ではなかった。

最初の方の夢は、自分が夢の中にいると理解していたから、まだマシだ。

けれども後の方は……まるであの時の事をもう一度体験したようで、大変気が滅入る。

「時間は……四時か」

枕元にあった眼鏡を掛け、壁時計を見た私は、再び眠りにつくには遅い時間だと知る。まあ、どちらにせよ、もう眠れそうにはなかったのだが。

軽く頭を振った後、ベッドから降りて窓のカーテンを開ける。星々が輝く夜空が広がる中、彼方が少しだけ青くなっていた。

夜明けまでは、もうすぐ。そうしたら、時の最果てに向かわなければならない。死の山に赴くメンバーを決める為だ。

「まあ、どうせ私は留守番だろうけどね。マールは当然として、残りはグレンにエイラってところかしら?」

柄にも無く、そんなおどけた調子で独り言を呟いたのは、やっぱり緊張と恐怖からだろう。

死んだ人を生き返らせる。そんな余りにも非科学的で非現実的なことに、私達は挑もうとしている。

「あんまり好きな言葉じゃないけど……祈るしかないわね」

そう呟いた後、私は両手を胸の前で組み合わせて強く握りしめると、そっと眼を閉じた。

すると、自然に幼馴染の顔が脳裏に蘇り、私は震える声で彼の名を口にした。

「クロノ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?」

シルバードを手に入れて以来、すっかりご無沙汰になっていたゲートを使って時の最果てにやってきた私は、思わず首を傾げる。

なぜなら、そこにはグレンとロボしかいなかったからだ。

――マールとエイラはどうしたんだろう? 確か二人で原始時代に行っていた筈だけど、まだ到着していないのかしら?

そんな事を考えていると、向こうも私に気づいたらしい。

ロボが「おはようございマス、ルッカ」と礼儀正しく頭を下げ、その横でグレンが「よお」と片手を挙げて挨拶をした。

「よく眠れたか?」

「ええ、まあね。それより、マールとエイラは?」

「お二人は、今日は来られマセン」

「え、どういう事?」

「そのままの意味だ。俺達で死の山に赴く」

私は唖然として、何度も瞬きをしつつグレンの顔を眺めた。

「な、なんで? メンバーは、ちゃんと話し合って決めるって……」

「理由としては二つある。一つ目の理由は、マールとエイラだ」

「あの二人が、どうかしたの?」

「まずマールだが、今の彼女は精神的に相当ヤバイ。どう頑張っても戦闘できる状態ではないし、誰かが見てやらないと危険だ」

確かにそうだ。クロノがいなくなってからというもの、マールは誰の眼にも明らかな程にやつれてきている。

本人は頑なに「大丈夫」と繰り返しているが、それが強がりなのは火を見るよりも明らかだ。そんな彼女を戦闘に参加させるのは厳しいという、グレンの意見は分かる。

けれど、それがどうして私がメンバーに加わる理由になるのかが分からない。それこそ、私がマールについてあげるのが、ベストと思うのだけれど。

と、そんな事を考えているのが顔に出ていたのだろう。グレンが軽く頷いた後、言葉を続けた。

「お前の考えは分かる。実際、俺もそうしようかなとも思った。だが……」

「だが?」

「さっき原始時代に行ってみたら、見事な二日酔いで寝込んでいた。どうやら昨日、エイラと一緒に派手に酒盛りをしたらしい。まあ、エイラなりの気遣いだったんだろうが」

「そのエイラサンも同じく苦しそうでしたし、今回はお休みして頂こうと、そっとしておきマシタ」

「そ、そうなの」

私は思わず苦笑した。しかし、すぐに表情を引き締め直すと、再度グレンに訊ねる。

「で、二つ目の理由は?」

「ああ、それは……」

そこで一旦言葉を切ったグレンが、ロボに何やら意味深な視線を向ける。

すると、その意図を察したらしいロボが「分かりマシタ」と一礼をして、ハッシュのいる部屋へと去っていった。

――な、何?

得体の知れぬ不安が胸の中で広がっていくのを感じ、私は落ち着かなくなる。

そんな心を静める為に、何でもいいから喋ろうと口を開きかけた途端、グレンが低い声で言った。

「ルッカ。お前、決して口には出さなかったが……本当は、行きたくて仕方がないんだろう? クロノを助ける為、死の山に」

「なっ!?」

余りにもストレートな彼の物言いに、私はバカ正直に反応を示してしまう。

まさかグレンにこの手の事を見抜かれるとは、予想もしていなかった。彼はこういう事に、滅法疎いと勝手に思っていたから。

と、またしてもそんな考えが表情に現れていたらしい。グレンは軽く嘆息すると、私の心の内を汲み取った様にこう言った。

「まあ、確かに俺はこういう事には縁が無い。分かったのは、単なる偶然だ。……クロノの奴から、前に話を聞いた事があってな」

「クロノから? 何の話?」

「以前、あいつは無実の罪で刑務所に投獄された事があるんだってな? その時、お前が単身乗り込んで、あいつを救出した……と」

「え、ええ、そうだけど……それが?」

今朝見た夢が頭に蘇る。全身に嫌な汗が浮かんできたが、私はそれを無視してグレンを促した。

「あいつ、こう言ってたぞ。『ルッカには、本当にデカい借りがあるんだ。いつか、絶対に返さなきゃならない。つっても、あいつプレゼントとかじゃ喜ばないし、難しいんだけどな』って」

「っ……!」

「その時は、特に気にもしてなかったが……お前とロボから海底神殿の出来事を聞いた時、何となくと頭に付くが全て分かった」

「……あ……あ……」

――やめて……それ以上、言わないで。

私の中の私が、震える声でそう呟いている。それに呼応するかの様に、全身が小刻みに震えだす。

グレンがこんなにも鋭いだなんて、今初めて知った。出来れば、知りたくもなかったけど。

「その反応を見るに、やはり……か」

「……」

私は何も言う事が出来ず、ただコクリと頷いた。するとグレンは、苦しそうに何度か頭を振った後、盛大に溜息をついた。

「あのバカ……それで本当に借りが返せるとでも思ってたのかよ」

「仕方が……ないわよ。あいつは、本当にバカなんだから」

辛うじてそう返事をした声は、自分でもハッキリと分かるくらいに涙で濡れていた。

すると、グレンが「ルッカ」と私の名を呼ぶ。ハッとして彼を見ると、穏やかな表情がそこにはあった。

「だったら、尚更行かない訳にはいかないだろ? 生き返らせて、一発ガツンと言ってやれ」

「……グレン……」

私はまじまじと、彼の顔を眺める。

最初に会った時はこのカエルの顔が、失礼だけど怖くて不気味で気持ち悪くて……とにかく、直視できなかった。

でも、長い間一緒に旅をする内に段々と慣れてきて、そして彼の内面を知っていって、自然とそういった気持ちは消えていった。

そして今、彼は私を懸命に励ましてくれている。思えば彼には、もしかしたらクロノ以上に生き返って欲しいと思う人がいるというのに。

魔王を討った事で、サイラスさんの事は気が済んだのだろうか? いいえ、きっとそんな事は無い筈。

けれども彼は、その事をおくびにも出さず、私を気遣ってくれている。彼が改めて年長者なんだと実感した私は、九割の感謝と一割のからかいを含めて言った。

「ありがとう、グレン。やっぱりこういう時は、年の功よね」

「おいおい、そりゃどういう意味だ? 人を年寄り扱いは止めてくれよ」

「人? 今、私の前にはカエルしかいないんだけど?」

「っ、お前……! もうじき俺は、元に戻るんだからな!」

少し憤慨した様子で言ったグレンに、私は笑いながら両手を合わせて謝った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、ああ……」

余りの事に、上手く喋る事が出来ない。

今、私の眼の前には大木に背を預け、グッタリとした表情のまま俯いているクロノが居た。

――成功した。私達は、クロノを助ける事が出来た……!

感動が募り、両の瞳から涙が止め処なく溢れ出す。けれども、私はそれを拭いはしなかった。いや、そんな事に気が回らなかった。

私の全ては今、クロノだけに埋め尽くされていた。震える声で、必死に彼に呼びかける。

「クロノ……お帰り、クロノ!!」

「う……ん……」

そんな風に彼が呻いた瞬間、私は堪えきれずに嗚咽を漏らした。

――生きている! クロノが生きている……!!

ハッキリとそれを実感する事が出来た私は、最早泣くしかなかった。そんな私の隣で、グレンが苦笑しながらクロノに呼びかける。

「よお、クロノ。気分はどうだ?」

「クロノ、良かったデス。良かった……」

後ろのいたロボも心底安堵した様子で、そう呟く。すると、クロノがようやく眼を開けてくれた。

「んあ?……ルッカにロボ……? 何でグレンが、此処に?……っ!?」

まるで寝起きみたいに間の抜けた声でブツブツ呟いていたクロノだったが、突然表情を険しくすると焦った様子で辺りを見回す。

「ラ、ラヴォスは!? ラヴォスはどうなった!? それにジールは!? サラさんに魔王はって……いってえ、何で身体がこんなに重くて痛いんだよ? それに此処、海底神殿じゃないのか?」

「ったく……暢気な奴だな、おい。こっちは散々苦労したってのに」

「仕方ないデスヨ。あの時間の直後に、助けたという事になるのデスカラ」

グレンとロボが呆れた様に笑い合う。それに対して、クロノはキョトンとした顔で瞬きを繰り返した。

「え? え? 何の事だよ? サッパリ分かんないぞ?」

「そうだな、それは……」

「ルッカが説明してくれマスヨ」

「ルッカが?…………おい、なんで泣いてんだ、お前?」

どうやら、今になって私が泣いている事に気づいたらしい。

怒りを覚えた私は、なるべく怒気が伝わる様にと意識しながらクロノに叫んだ。

「この……大バカ者!!」

「はあ? な、なんなんだよ、そんなボロ泣きしながら叫んで……」

――ああ、ダメだ。嬉し過ぎて、上手く怒る事すら出来ない。

自分でも分かるくらいに歓喜の叫びになってしまった事に自嘲した私だったが、すぐにどうでもいい事だと片づける。

もう、強がっていられる自信は無い。そして、したくもない。

私はフラフラとクロノに近づきながら、飾らない己の本心を曝け出した。

「みんな、待ってたんだから!……みんな、みんな………待ってたんだからね!!」

「うわあっ!? お、おい!?」

やにわにクロノの首筋に抱きつくと、彼は酷く狼狽した様子で私に怒鳴る。

けれど痛みで身体が動かないのか、私を振り解こうとはしてこない。私はそれをいい事に、尚更彼の首に回した両腕に力を込めながら、口を開いた。

「これで二度目なんだからね! あんたを助けたのは……これが最後よ!? 今度ヘマしたら……もう助けてやんないから!」

「に、二度目!? な、何の事だよ、一体! ってか、ルッカ!! ちょっと離れろよ!! 痛いんだって、マジで!!」

――……誰が離れるもんですか!

心の声でそう返事をしつつ、私はクロノの胸の中で泣き続け、喋りつづける。

「あんたがいない間、すっごく大変だったんだから……マールがね、ずっと泣きっぱなしで……それに戦力だってガタ落ちで……」

「お、俺がいない間? い、言ってる意味が全然……つか、マジで離れろっての!! 俺を絞め殺す気か!?」

「色々と事件も立て続けに起こって……グレンなんて、魔王と一騎討ちするし……でも、私だって大変だったから……ジナ小母さんを上手く誤魔化して、あんたの人形を持ってくるの……」

「だから! ひとっつも分かんねえんだっての、言ってる事が!! と、とにかく離せって! その……い、色々と当たって……」

「ちょっと、クロノってば! 聞きなさいよ!!」

こちらの話を無視して叫ぶ彼に、私は怒鳴った。

「き、聞いてるって!! だから、とりおえず落ち着け! まず、この手を離せ! 離したって、俺は別に逃げたり消えたりなんかしねえからよ!」

そのクロノの言葉に、私は言い様の無い怒りと恐怖を感じる。その感情に任せて、私は叫んだ。

「っ……よく言えるわね、そんな事!!」

「は、はあ?」

「本当に……本当に…………バカなんだから。ひっく……うああああっ!!」

私は更に両腕に力を込めると、本心の赴くままに泣き叫んだ。勿論、クロノは何か怒鳴りながら抵抗してきたけれど、私はそれを無視する。

マールへの気遣いとか、自分のプライドとか、そんなものは遥か彼方に飛んで行っていった。

「ほ、本当になんなんだよ? ちょっとグレン、ロボ! 見てないで、こいつをなんとかしてくれ!!」

「それは無理な相談だな」

「同意見デス」

「そ、そんな薄情な……こっちは色々とマズイんだって! このバカ、自分が女って自覚ないのかよ!?」

「バ……バカはあんたよ! この超大バカ者!!」

「だったら離せっての!!」

「誰が!!」

 

 

 

 

グレンとロボの苦笑をバックに、そんな私とクロノの口喧嘩が、いつまでも死の山に木霊していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


あとがき

 

クロノトリガーより、ルッカ視点での死の山イベントのお話でした。

考えてみれば、ルッカはクロノを(プレイヤー次第では)ゲーム中で二回助ける事になる訳で、その辺りの彼女の心情を書きたいなと思ったのが、この話を書いたキッカケです。

尚、グレン(カエル)に何の意味も無い見せ場があるのは悠士の趣味です。いや、だってメンバー中で彼が一番好きなもんで。

話の都合上、マールにエイラ、そして何よりも魔王ファンの方には優しくない話となってしまいましたが、少しでも楽しんで頂ければ幸いです。では。

 

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