〜運命の出会い〜
「あーーーーっっ!!何なんだ、この村は!?」
ネスは今、全身青ずくめの怪しいを絵に描いた連中に追いかけられ、必死に逃げ回っていた。
UFOや変なマシーン、オマケに動き回る大樹がウヨウヨいたグレートフルデッドをやっとの思いで通り越し、
その後に行き着いたココ―――ハッピーハッピー村。
この村についた途端、ネスは悲惨な目に遭い続けていた。
入り口の近くにいた女の子には突然、「寄付を求めています、いくらでもいいからしなさい」と言われ、断ると物凄い形相でつけまわされる。
ハッピーハッピー教とやらの信者達には、「お前青くない!ハッピーハッピー教の敵だ!!」等と訳の分からない事で目の敵にさる始末である。
「…ったく!本当にこんなトコにいるのかなあ?ポーラって女の子」
息を切らしながらも、まだ見ぬ仲間の事を思い浮かべていると、更に数を増した信者達が迫ってきた。
「まてーーーーー!!!」
「怪しい奴め!!」
「全身青く塗ってやる!!」
「うわっ!?ああもうっ!しつっこいなあ!!」
いい加減うんざりしてきたネスは、クルッと身をかえし、右手から眩い光を放つ。
「PKフラッシュα!!」
「がっ!?」
「な、何だ!?」
「め、目が!?」
突然強烈な光を見た事で、目が眩んでいる信者達の隙をついて、ネスはどうにか逃げ切る事に成功した。
「はあっ、はあっ、はあっ……ようやく、撒いたか」
村の西南の位置にある牧場付近で、ネスはやっと息をつく事ができた。
「それにしても……」
不意に彼は、視線を牧場にいた牛に移す。……驚きと言うか当然と言うか、この牛も全身真っ青だ。
「……まさか、牛まで信者なのか?」
誰とも無しに呟くと、牛はモオ〜ッと鳴いてこっくりと頷いた。
(わしはただの牛ですんけど、カーペインターさんのお話は心にしみいるです)
「……あ、そう」
その牛の言葉に、ネスは溜息をついて頭をかく。
(カーペインターってのは、このハッピーハッピー教の教祖だって、信者が言ってたな。気になるから一度会っておいたほうがいいかも……)
思いながら、彼は村の中心にある教団本部に目をやった。
変な教団だから、なるべく関わりたくないと言うのが本音ではあるが、この村の様子を見る限り、ただ変というだけの済まされるものでは無い。
もしかしたら、ギーグが関わっているのかもしれない。………そうだとしたら、調べないわけにもいかないだろう。
(まっ、それはさておきポーラを探すのが先決だよね。でもこんな村じゃ、聞きこみも出来ないよなあ……)
どうするか、とネスが辺りを見渡していると、不意に自分を呼ぶ声が聞こえる。
「オイ、そこのお前」
「っ!?……え、あ、僕?」
驚いて声のした方に振り向くと、仮面をかぶった少年が立っていた。
「そうだよ。お前、この村の新入りか?」
「う、うん、まあ……」
曖昧に返事すると、少年は暫くネスを見回した後、呆れた様な溜息をつきながら言う。
「ったく、だったら全身青くしろよな。……まっ、俺もあんまり人の事言えないけど」
「は、はあ……」
よく分からないが、どうやら仲間だと勘違いしているようだ。
どうにかして情報を聞き出せないかとネスが思案していると、少年は思い出した様に声を上げる。
「あっ、そうだ!お前さ、ちょっと伝言頼まれてくれないか?」
「えっ、伝言?」
訝しげに聞き返すと、彼は大きく頷いた。
「ああ。カーペインター様になんだが、姫神にするって言ってたポーラって子、上手く攫ってきて洞窟を抜けた先の例の小屋に隠してあるって」
「!!……ポーラ!!?」
その名前に、思わずネスは大声を上げてしまった。
「!!??」
(……しまった)
慌てて口を塞ぐがもう遅い。少年はハッとした仕種を見せ、どもりながら言った。
「お、お前、仲間じゃないな!?…オイ!誰か…」
「ええっと……やあっ!!」
「ぐわっ!?」
少年が仲間を呼ぶよりも早く、ネスはバットで彼を叩く。モロにその一撃を受け、少年は地に伏せた。
そして気絶したのを確認すると、ネスはさっきの少年の言葉を思い返す。
「例の小屋って……トンチキさんが貸したって言う山小屋の事に間違いないだろうな」
とすれば、さっきの話も真実とみていいだろう。ひょんな事から得られた情報に、彼は安堵の溜息をつく。
(やれやれ……どうにか会えそうだな、ポーラに)
――――確か村の東北に洞窟への入り口があった気がする。
そう思った彼は、急いでその場を後にし、東北の方角へと駆け出した。
「……ここかな?」
話の通り、洞窟を抜けた先には小さな一軒の山小屋があった。幸いな事に見張りもおらず、辺りはシンと静まり返っている。
「窓には鉄格子か……監禁するにはうってつけの小屋だな」
―――――間違いない。ポーラはここにいる!
そう確信したネスは、そろそろとドアノブに手をかけた。
(中に見張りがいたら厄介だな……一気に踏み込むべきか、それとも……)
等と暫く逡巡していたが、結局彼は様子を窺う様にゆっくりとドアを開けた。
僅かに軋む音がしたが、中からは何の反応もない。――――聞こえなかったのか、誰もいないのか?
ネスはもう少しドアを開け、中の様子を覗く。
目の前には簡素なテーブルと椅子があるだけで、見張りは勿論ポーラの姿も見えない。
(!…いない?ここじゃなかったのか?)
「……誰?」
落胆しかけながら足を踏み入れた彼の耳に、横から女の子の声が聞こえる。
聞き覚えのない、朗らかな声……そう思った刹那、ネスはハッとした。
――――……いや、聞き覚えはある。この声は……夢で僕に語りかけてきた……
「……ポーラ?」
ハッとして声のした方に振り向くと、そこには牢屋があった。
入った時は正面にばかり気をとられていて気づかなかった様だ。
そして、その牢屋の向こう側には……ジッとコチラを見つめている、ネスと同じくらいの女の子の姿がある。
「……ネス、じゃない?」
ややあって、その女の子が口を開いた。その言葉に彼は戸惑いながらも頷く。
「う、うん、そうだよ。君はポーラ……だよね」
そう聞き返すと、女の子―――ポーラは力強く頷いた。そして歓喜の笑顔を浮かべ、堰を切った様に喋りだす。
「本当にネスなのね!ああよかった。ネスという名の人が私と運命を共にするって……そんな夢を確かに見たの。
だから、ここに連れてこられてきた時、名前だけしか知らない貴方に、テレパシーで助けを求めたの」
「うん、聞こえたよ。その声を頼りに、僕はここまで来たんだ」
ネスがそう言うと、彼女は少しばかり俯きながら続けた。
「ありがとう……やっぱり助けに来てくれたのね。貴方が来なかったら私……」
「え……ポーラ?」
彼は不思議そうな顔をしながら「どうしたの?」と聞こうとしたが、それより早くポーラが口を開いた。
「泣き出し……ちゃう……所……だった……」
そう言う彼女の声は振るえ、俯いた顔から涙が伝うのに気づき、ネスはどきまぎしながら言う。
「ポ、ポーラ!?な、泣かないで。あ、そ、そうだ!い、今開けるからね!!」
「え?で、でもこのドアは鍵がかかっていて……」
「大丈夫だよ!こんな鍵……ぐらい……!!」
心配するポーラに返事をしながら、彼は牢屋のドアをこじ開けようとするが、いくら力を込めても鍵のかかったドアはビクともしない。
「はあっ……はあっ……くそっ!力ずくじゃダメか」
赤くなった手をさすりながら、ネスはぼやく。
(中にポーラがいるんじゃ、PSI使うわけにもいかないし……)
何か手はないかと考える彼に、彼女は声を掛けた。
「ネス。ここの鍵は、きっとカーペインターが隠し持っているはずなの」
「カーペインター?それってハッピーハッピー教の教祖の?」
「ええ。少し前にいた見張りがそう言ってたの。だから、その鍵を取ってきて。お願い」
「……うん」
そうと分かればモタモタしていられない。急いで小屋を飛び出していこうとしたネスだったが、不意にポーラの呼び止められた。
「あっ!まってネス!」
「?……何、ポーラ?」
「あのね、カーペインターは雷を操るらしいの。だからこれを付けていって」
そう言って彼女は、服のポケットから、小さなバッジを取り出し、彼に手渡した。
「これは……?」
「フランクリンバッジ。それを付けていれば、雷も平気のはずよ。私はここで待ってるから、きっとあいつを倒して迎えに来てね」
「ポーラ……ありがとう!」
早速ネスはフランクリンバッジを胸につけ、クルッと身を返しながら、ポーラに励ますように言う。
「じゃあ行ってくるよ、ポーラ。出来るだけ早く戻ってくるから。」
「うん。……でも無茶はしないで。私、いつまでだって待ってられるから。貴方の力、信じているもの。心配しないで、頑張ってね」
明るい声で彼女はそう言ったが、それはこちらに余計な心配をかけたくないという気遣いだろう。
どれくらい監禁されていたのかは知らないが、きっと心細い思いをしていたに違いない。
―――早くポーラをここから出してあげたい。
今のネスの中は、その事で一杯だった。
「ポーラ……もう少しだけ、待っててね!」
それだけ言うと、彼は勢いよく小屋を飛び出していった。
――――――それから数時間後。
「ポーラ!!」
ネスが息を弾ませながらドアを開け、ポーラは牢屋越しに彼に近寄る。
「ネス!鍵を取ってきてくれたのね!」
「うん!待っててね、すぐ開けるから」
言いながら彼はゴソゴソとリュックの中をあさり始めた。
「え〜〜と……っ!あった!」
早速取り出した鍵でドアを開けている時、ポーラがネスに声を掛ける。
「怪我は無い?大丈夫?」
「え?ああ、平気だよ。フランクリンバッジのおかげで、カーペインターの雷もどうってことなかったし」
心配する彼女に笑いかけ、それから彼は照れ気味に頬を掻いた。
「……まっ、乱暴な信者達に、それなりの攻撃はもらっちゃったけど……」
「ネス……」
確かにこうして彼をよく見ると、所々に擦り傷や痣が出来ている。
「私のために……ごめんなさい」
申し訳なさそうに頭を下げるポーラに、ネスは慌てたように言った。
「べ、別に謝ることじゃないよ!ポーラのせいじゃないんだし……その……え、あ、そ、そうだ!ハイ、もう出られるよ」
ガチャリと鍵が外れる音がし、それと同時に彼女はドアを開ける。
「ありがとう、ネス!私の思ったとおりの人だったわ!」
(……!!)
そう言って間近で微笑んだポーラの顔に、彼は急に顔が熱くなったような気がして、不意に顔を逸らした。
(???……ど、如何しちゃったんだ、僕は?)
どうもポーラと話していると変な気分になる。心臓の音も、戦っている時以上に高鳴っている。
「?……ネス?」
「え、あ、ううん、なんでも無いよ!そ、それより早いとこツーソンへ戻ろう。君の両親……と言うよりパパがすっごく心配してたよ」
何かを誤魔化す様なネスの口調に、ポーラは一瞬怪訝そうな顔をしたが、すぐに笑顔で頷いた。
「そうね。随分心配かけちゃったし、早く帰って安心させてあげなきゃね」
「うん。でも帰るのは結構大変だから気をつけてね。谷には変な生き物や、妙なUFOなんかがウヨウヨいるから……」
彼が言いにくそうにそう告げると、彼女は「大丈夫」と首を振った。
「二人で力を合わせれば、きっと戻れるわ。……実はね、私もちょっとくらいなら危ない超能力を使えるのよ」
「えっ?……危ない超能力?」
「そっ、見てて」
言うなりポーラは小屋の中のテーブルに右手を突き出す。
「PKフリーズα!」
途端、何処からか冷気の風が吹き荒れ、テーブルは瞬く間に氷付けになってしまった。
「……」
「ねっ?」
「……え?あ、う、うん。凄いねポーラ……」
見事にテーブルだけを凍らせたPSIの扱いは、明らかに自分より上手だ。
確かにこれなら来たときより、遥かに楽かもしれない。
(……でも、『ちょっと危ない』どころじゃないと思うんだなあ……これは)
とは流石に口には出さず、呆然と凍ったテーブルを見ていたネスに、ポーラはすっと手を差し伸べた。
「?……ポーラ?」
「ネス、これから宜しくね。どれくらい長い冒険になるか分からないけど……一緒に頑張りましょう!」
「う……うん!こちらこそ、ポーラ!」
そう言って彼も手を差し出すと、彼女はギュッとそれを握りしめる。
瞬間、ポーラの柔らかな手の感触が伝わり、ネスは全身に電流が奔ったような感覚を覚えた。
(な、なんだろう?この感じ……嫌じゃないんだけど……何か恥ずかしい様な……)
今までに感じた事のない感覚に、混乱を隠せないネスであった。
――――こうして、めでたく出会いを果たしたネスとポーラ。
これから行く先々で待ち受ける数々の困難を通して、二人はお互いにかけがえの無い存在となっていく。
但し、ネスがポーラに抱いていた感情に気づくのは………これから随分と先の話である。
あとがき
結構ネス×ポーラ話を書いてきたのに、出会いの話を書いていないのに最近気がつきました(遅)
で、出来上がったのがコレです。出来はまあ、自分では上々だと思うんですけど…皆さんにはどうだか(汗)
後、最近ゲームしてないんでうろ覚えなんですけど、ポーラは最初からPKフリーズα使えましたよね?
違ってたら直しますので、ご連絡下さい(と言うか、ちゃんと調べておけ)では。