〜遊園地へ行こう! 〜
(注)この小説は、『コラボ学園パロ設定』(ダークロとマザーのキャラが学生)になっています。
――――雲ひとつない青空の下、爽やかな風が吹きぬける日曜日。
ネス・ポーラ・ユリス・モニカの四人は、連れ立って遊園地へと遊びに来ていた。
「さ〜てとっと……入場もしたし、どこから回る?」
「う〜〜ん……どれもこれも面白そうで、迷っちゃうわね」
仲良くガイドマップを眺めながら、ネスとポーラは今後の計画を立てる。
そんな彼らの横で、ユリスとモニカは周囲をグルッと見渡していた。
「うわあ……すっごい人」
「本当。まっ、仕方ないわね。今日は日曜日なんだし、込んでて当然よ」
二人の言う通り、園内は家族連れや恋人達で溢れている。人々の笑い声が谺し、世界が楽しみの色に染まっていた。
「で、ネス。最初にどこ行くか、決まった?」
「いや、それがまだ……何か希望ある?」
そう尋ねられて、ユリスは静かに視線をモニカへと向ける。
「ボクは特にないけど……モニカ、何かある?」
「えっ、私? う〜〜〜ん、あるにはあるんだけど……いいの?」
「いいわよ。私達じゃ中々決まらないから」
「ありがとうポーラ!……それじゃ、あそこに行くわよ!!」
ビシッと遠くの方を指差し、先頭をきって歩き出したモニカに、三人は苦笑しながらついていった。
(……いきなり、ジェットコースターとは思わなかったよ)
(……まあモニカらしいと言えば、らしいわね)
長蛇の列を並びながら、ネスとポーラは前方にいるユリスとモニカに聞こえない様に、小声で会話を始めた。
(そういえばポーラ)
(?……何?)
(君は大丈夫なの? こういう絶叫マシンって)
心配気な声を出したネスに、彼女は笑顔で頷く。
(全然大丈夫よ! 小さい頃から、よく乗ってたもの)
(小さい頃から?)
(ええ。パパとママと三人で。パパなんか乗る前に『ポーラ、パパがついてるから安心しなさい』とか言ったのに、
いざ乗ると涙流しながら絶叫しちゃったのよ。……恥ずかしかったわ)
(は、ははは……なんか、容易に想像できるな)
(そう言うネスは大丈夫なの? 絶叫マシン)
急に切り返された彼は、「えっ?」と虚をつかれた顔をしつつ、言いにくそうに口を開いた。
(……僕、実は絶叫マシンって初めてなんだよね。だから、まあ……不安半分、興味半分って所かな)
(そうなんだ。くすっ……怖いからって泣き出さないでよ?)
(なっ……あ、当たり前だろ! 頼まれたって泣くもんか!)
少々赤くなった顔を背けたネスに、ポーラは可笑しそうに笑った。
――――その頃、前方のユリスとモニカは……。
「うっわ〜〜〜!! スリルありそうね、このジェットコースター! ねっ、ユリス?」
「う、うん……そうだね」
楽しみで仕方がない、という感じのモニカに尋ねられたユリスは、曖昧に返事をする。
「あれ? ユリス、君どうし……はっは〜〜〜ん、さては怖いんだ?」
「う、うるさいな!」
「あ〜〜〜! 図星なんだ?」
ケラケラと笑い出した彼女を、彼はジト目で睨みつけるが、実際に図星なので上手く反論出来ない。
「……そういうモニカこそ、怖いんじゃない?」
気がつけば、苦し紛れにそう呟いていた。しかし、その言葉にモニカは、一瞬だがビクッと体を震わす。
(……あれ?)
予想外の反応に、ユリスは首を傾げる。と、そんな彼に、彼女は僅かに狼狽した様な声で言った。
「な……何言ってるよ!? こ、怖い訳ないでしょ!!」
「……」
「ち、ちょっと! そ、その目は何よ!?」
「モニカ……ひょっとして、ただの怖いもの見たさって奴? このジェットコースターに乗りたかったのは?」
「っ!!……い、いや……その……」
先程の賑やかさは何処へやら、俯いてモジモジし始めた彼女に、ユリスは知れず笑みがこみ上げてきた。
「……クスッ」
「!……ちょっとユリス!! 今、笑ったでしょ!?」
「だ、だって……まあそれより、本当にいいのモニカ? 止めるんなら今のうちだよ?」
「あ、当たり前でしょ!! ユ、ユリスだって、怖いんならベンチで待っててもいいのよ?」
「な、何を……!」
等と二人が意地の張り合いをしていると、いつしか順番が回ってきていた。
ユリスとモニカ、それにネスとポーラはそれぞれの思いを胸に、席に座る。
「うう……やっぱ緊張する……」
「……同感」
「ふふ……いよいよね」
「べ、別に怖くなんかないんだから……」
発車のベルが鳴り響き、四人を乗せたジェットコースターは、ゆっくりと斜面を上昇し始めた。
――――数分後。
「だ、大丈夫? ポーラ?」
「……なん……とか……」
「全く。怖いもの見たさも程々にした方がいいよ、モニカ?」
「う……うるさい……わね……」
真っ青な顔でぐったりとしているポーラとモニカを、ネスとユリスは支えながら歩いていた。
((まあでも確かに……気分悪くもなるよな……あれは))
同時にそう思った二人は、軽く吐き気を覚えて口元に手を当てる。それから無言で顔を見合わせた。
――――四人が乗ったジェットコースターは、全員の想像を遥かに超える、恐怖の絶叫マシンであった。
直角急降下に連続大回転、急カーブに地面スレスレ進行と、凄かった所を上げていくとキリが無い。
『悲鳴すら上げられない最恐のジェットコースター!』というキャッチフレーズを、四人は身をもって味わっていた。
そして意外な事に、一番怖がった(というより乗ったダメージが大きかった)のはポーラであった。
キャッチフレーズ通り、乗っている間は悲鳴も上げられず、降りてからは一人で歩く事もままならない程である。
また、モニカも絶叫し続けていた事から察するに、相当怖かった様だ。現に本人は気づいていないだろうが、目元にはうっすらと涙が滲んでいる。
そんな彼女達の様子に、乗る前は怖がっていたネスとユリスの方が、かえって落ち着いてしまっていた。
「とりあえず……その辺で休憩しようか?」
「そうだね。二人とも、それでいい?」
「「……ぜひ、お願いします」」
力なく返事をする彼女達に、彼らは揃って苦笑した。
「「……お腹空いた」」
遊園地の時計が12時を示した時、ネスとユリスは同時にポツリと呟く。その言葉に、前を歩いていたポーラとモニカが振り返った。
「え? あ……もう12時か。それじゃ、そろそろランチにしましょう!」
「そうね。私も結構空腹になってきたし」
彼女達も賛成してくれたので、一同は昼食をとる事にした。
「じゃあさ、ハンバーガーにしようよ! さっき店を見かけたからさ!!」
「え〜〜? ここまで来て、ハンバーガーはないだろネス。ボクはパイが食べたいなあ」
それぞれの好物が食べたいと言い出した彼らに、ポーラとモニカは微笑しながら口を開く。
「くすくす……心配しなくてもいいわよ、二人とも」
「そうそう。どっちの希望も叶うから」
「「……えっ?」」
どういう事かさっぱり分からないネスとユリスは、怪訝そうに首を傾げる。
そんな二人に、彼女達は揃ってバッグからランチボックスを取り出した。
「「ジャ〜〜〜ン!!」」
「あっ! お弁当、作ってきてくれたんだ!!」
「……えっと、ポーラはともかくとして……モニカ、も?」
喜びを全身で表すネスとは対照的に、ユリスは低い声で遠慮がちに尋ねる。
(そういえば……なんか朝早くに台所から物音が聞こえてた様な……)
今更ながら、その事を思い出した彼は、遠くを見る様な目で、今までの経験を思い返す。
(モニカの料理食べて……何もなかった事なんか、無いもんなあ……)
と、そんな事を考えていたユリスに、モニカは憤慨した様に頬を膨らませながら文句を言った。
「な、なによユリス!! 私がお弁当作ってきたらいけないって言うの!?」
「いや……だって……ねえ……」
「っ!! ユ〜〜リ〜〜ス〜〜!?」
凄まじい剣幕で詰め寄る彼女に、彼は慌てて笑顔で口を開く。
「じ、冗談だよモニカ! う、嬉しいよ、お弁当作ってきてくれて!」
「……本当にそう思ってる?」
「も、勿論! ……あ、そ、そうだ。あ、あそこがいいんじゃない? ランチの場所」
ユリスが冷や汗を流しながら指差している場所に、一同は視線を向けた。
「えっ?……ああ、芝生の上ね。別にいいけど、そのまま座るのはちょっとなあ……」
「あっ、大丈夫よ。ちゃんとシートを持ってきたから」
「なんだ、それなら問題ないな。それじゃ、あそこで食べようよ」
「そうね。それじゃ、食べましょうか」
そして四人は、割と静かな空間にある芝生の上に腰をおろす。次いでポーラとモニカは、それぞれのランチボックスの蓋を開けた。
「はいネス。どうぞ召しあがれ」
「ありがとうポーラ! わあ〜〜美味しそう!!」
様々の具を挟んだサンドイッチに、見栄え・栄養バランス共に申し分ないサラダ。タコさんウインナーを初めとする沢山のアラカルト。
勿論ネスの好物であるハンバーグも忘れずに入っている……正に完璧なお弁当である。
「頂きます!」と律儀に手を合わせ、彼は一心に弁当をパクつき始めた。
そんなネスを横目で見ながら、ユリスは自分の前に置かれた弁当の中身を凝視する。
(ポテトパイ……だな、これは……一応)
とりあえず、何とかそう判別できるという事は、ある程度は上達しているらしい。
尤も、多少上達したぐらいではモニカの料理の場合、大して変わらない様な気もするが。
(まっ……いつかみたいに、病院送りになる事はないだろう……多分)
モニカに気づかれない様に溜息をついた後、彼はゆっくりとパイを口に運んだ。
「モグモグ……」
「ど、どう? ……ユリス?」
やはり多少不安なのか、彼女は心配そうな声で感想を求める。
「…………美味しい」
暫くして、ユリスがポツリとそう呟いた。
「ホ、ホント!?」
「う、うん……美味しいよ、本当に」
目を輝かせながら尋ねてきたモニカに、彼は曖昧に返事をする。――そう美味しいんだ……モニカの料理が。
(ど、努力したのかな?……しっかし、前からそんなに時間たってないのに、こんなに変わるなんて……)
パクパクとポテトパイを口に運びながら、彼はそんな事を考える。
どうも腑に落ちない機がするが、別段困る事ではない。いや、むしろ大いに喜ばしい事だ。
「どう、ユリス! 今回で私の事、見直したでしょ!?」
得意げな表情で胸を張る彼女に、ユリスは素直に賛辞の言葉を述べる。
「うん、モニカも料理の才能があったんだね!」
……と、その時だった。
突然、妙な音がしたかと思うと、ユリスがピタリと動きを止めた。見ると、その顔は真っ青である。
「ど、どうしたの? ユリス?」
「…………」
モニカの問いには答えず、彼は無言で立ち上がる。
そして次の瞬間、猛スピードで近くにあった小さな建物に飛び込んでいった。
「「「……」」」
それを見ていた後の三人の間に、暫し沈黙が流れる。ややって、ポーラが口を開いた。
「モニカ……何か変な物入れなかった?」
「べ、別に変な物なんて……あ、もしかしたら『アレ』がいけなかったのかしら?」
「……『アレ』? 何、それ?」
「え、何って……」
その直後、モニカの口から発せられた言葉を聞いて、ネスとポーラは思わず顔を見合わせた。
(……ユリスには黙ってようね)
(……同感)
――――当のユリスが、げんなりした顔で三人の前に現れたのは、十五分後の事である。
――――夕暮れ時。
思いっきり遊び尽くした一同は、本日の締めとして観覧車に乗っていた。
この観覧車は比較的小さな物で、四人だと窮屈と言う理由から、ネス・ポーラとユリス・モニカに別れて乗っている。
それぞれが大きな満足感、そして僅かな疲労感を感じる中、恋人と他愛ない会話を交わしていた。
「ふう〜〜……今日は楽しかったわね!」
「うん! お弁当も美味しかったよ!」
お互い寄り添う様に、並んで座りながら会話をしているのはネスとポーラである。
「ふふっ、ありがと。……でも、ゴメンねネス。ちょっと迷惑かけちゃって」
「へっ? ……ああ、ジェットコースターの時の事? 別に気にしてないからいいよ」
そんな会話をしている間に、観覧車は頂上についた様だ。小さな物とはいえ、やはり頂上から見渡す景色は格別である。
「綺麗……ね」
「……そうだね」
二人して窓に顔を近づけ、暫し絶景に目を奪われる。やがて、ネスとポーラはどちらともなしに向かい合った。
「また……来たいね、ここに」
「……うん」
どうも観覧車というのは、恋情を高ぶらせる作用があるらしい。彼が慣れた様子で彼女に頬に手を添えると、彼女は静かに目を閉じた。
――――その頃、ユリスとモニカは……。
「……ユリス?」
「……何?」
心なしか普段より低い声の彼に、向かい合って座っていたモニカは、恐る恐る尋ねた。
「その……大丈夫?」
「……まあね」
ユリスはぶっきらぼうにそう言った後、微かに苦笑する。
「まっ……二度はゴメンだけどね、あんな目は」
「う……ゴメン」
バツが悪そうに俯いた彼女に、彼は慌ててフォローを入れた。
「あ、で、でもね、モニカ! ……その……お弁当を作ってきてくれたのは、嬉しかったよ」
「……えっ?」
「いや、だからさ……えっと……また、いつか……」
作ってよ……そう言おうとしたユリスの唇に、突然柔らかい感触が染み渡る。
「!?……な、ななななっ!? モ、モニカ!?」
唇に手を翳しながら、上擦った声を出した彼に、モニカは「嬉しい事言ってくれたから、そのお礼」と、悪戯っぽく笑いながら言った。
「お、お礼って……ったく!」
「はははっ! ユリス、顔真っ赤だよ?」
「うっ……ゆ、夕陽に当たってるからだよ!」
「ふう〜〜ん? ……まあ、そういう事にしてあげよっか!」
「〜〜!!」
最後の最後でしてやられたユリスは、赤い顔のまま力無く項垂れる。しかし、その表情には、僅かだが笑みが浮かんでいた。
――――また来ようね……遊園地に……。
あとがき
た、大変長らくお待たせしました、エイト(こまめ)様。ようやく貴方様のキリ番6776小説UPです(汗)。
リク内容は『MOTHER2組とダークロ組で遊園地に行く』でしたが、流石に8人ものキャラは動かせないので、
メインの四人にさせてもらいましたが、よろしかったでしょうか? (不安)
こんな物でよろしければ、お持ち帰り頂くなり、HP上にUPするなり(誰がするか)してください。では。