「……なんなんだよ、これは?」

「だから言ったでしょ。ブライダルモデルだって」

「いや、それは分かってるっての。俺が言いたいのは、この構図のこと」

「構図? ゆういっちゃん、どういうこと?」

「どうもこうも……なんで、男一人に女二人なんだよ? 明らかに間違ってるだろ」

「そういうテーマらしいから、別にいいんじゃない?」

「テーマ? どういう?」

「あ、私スタッフさんから聞いたよ。『両手に花』だって」

「ブライダルモデルのテーマとして、不適切もいいとこだろうが、それ!」

「そんなことないわよ、本当に挙式するわけじゃあるまいし。エンターテイメントだって思いなさいよ」

「エンターテイメントってなあ……」

「まあまあ、ゆういっちゃん。難しいこと考えないで、ちゃんとモデルのお仕事しようよ」

「……なんか楽しそうだな、光美ちゃん」

「えへへ、分かっちゃう? やっぱり女の子としては、ウエディングドレスは憧れだもの。ね、繚奈」

「ま、その意見には賛同かしらね。特に私は、こういう機会でもなきゃ着ること無いし」

「いや、そんなことはわか……あ〜〜そっか、あんたはそうだっけか」

「そそ。ま、とにかく、引き受けたからにはしっかりやりましょ。……何よ?」

「いや、あんたもあんたで、結構乗り気だなって」

「悪い? 私だって女として、着飾る事に人並みの興味はあるわよ」

「分かってるよ。そう怒んなっての。……しかし、まあ、あれだな」

「なに、ゆういっちゃん?」

「いや、ウエディングドレスって、そんなデザインのもあるんだなって。俺が思ってたウエディングドレスは、ほら……スカートの部分がこう、フワっとしてる……」

「ああ、プリンセスラインのことね。王道だし、私も素敵だなって思うよ。だから今回もそれにしようかなって思ったんだけど……女性スタッフさんが、このドレスを勧めてくれたの」

「なんて名前のドレスなんだ?」

「エンパイアラインって言うの。動きやすいし、結構気に入っちゃった!」

「へえ。で、繚奈、あんたのは?」

「とってつけたような質問、ありがとう。これはAライン。光美と同じく女性スタッフさんの勧め。ま、私としては良いと思ってるわ」

「うん。とっても綺麗だよ、繚奈。ゆういっちゃんも、そう思うでしょ?」

「え? ああ……まあ……そうだな」

「え〜なに、その気の無い返事? 繚奈に失礼だよ、ゆういっちゃん」

「構わないわよ、光美。彼は貴女のドレスしか興味ないんだから」

「なっ……!」

「あ……そう……なの?」

「……まあ……」

「そうそう、さっきの口ぶりからして貴方、光美にはプリンセスラインのドレス着てもらいたかったんじゃないの?」

「いっ!? いや、そういう意味で俺は言ったんじゃ……」

「そ、そうなの、ゆういっちゃん?……わ、私スタッフさんに頼んでくる!」

「ひ、光美ちゃん! 別に良いっての! 気に入ってんだろ、それ」

「で、でも……」

「大体、これはあくまでモデルなんだから。俺の事なんか気にしなくていいよ。……そういうのは本番でさ……」

「あ…………うん!」

「はいはい、ご馳走様。…………この調子じゃ、本番はまだまだ先になるわね」

 

 

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