心の支え 〜 Paula 〜
「ひゃ・・・くしゅ!」
「ポーラ!?」
「ううん・・・平気よ、ただの風邪だから・・・」
「ただの風邪・・・じゃないでしょ!? 凄い熱だよ!」
「ネス・・・」
ネスは見るからに辛そうなポーラを見て、おでこに手を当てると少し怒りつつも優しく諭し・・・
「今は引き返そうよ。ぼくのヒーリングでも完全に治らないんだから、今は休もう?」
「うん・・・ごめんなさい・・・」
(囚われの身になっていてもずっとぼくを待っててくれたんだ・・・少しでもポーラを支えなくっちゃ!)
ツーソンへの帰り、今までの疲れがドッと来たのか、ポーラは高熱を出してしまったみたいだ。 距離的にはまだハッピーハッピー村の方が近いので、ハッピーハッピー村に戻ることにしたネスたち・・・
「ポーラ、ぼくたちは仲間だからさ、もし困ったことがあったら頼ってよ。ぼくに力になれるのかはわからないけど・・・」
「うん・・・ありが・・・」
(ポーラ? やっぱり疲れが溜まっていたんだな・・・)
(ぼくでは頼りないかもしれないけど、ぼくは君を・・・守りたい。だから、今はおやすみ)
ネスは、不慣れな手つきながらもポーラのために喉を通りやすい食べ物を作ってから、しばらくの眠りについたのだった。 ネスも気を張り詰めて神経が参っていたのだった。
慣れない料理を作ったというのもあるが、病気だからといって敵の攻撃がやむわけではないので、ハッピーハッピー村に戻るときは必然的に1人でどうにかしないといけなかったからだ。
翌朝・・・
「うぅぅーん・・・あっ・・・」
「あっ、おはようネス。 昨日はありがとう」
「う、うん。 ポーラこそ、熱は下がったの?」
「おかげさまでこのとおり、いつもの元気が戻ったわ!」
「良かった。 やっぱりポーラは笑顔が似合うよ」
「えっ・・・!? や・・・」
「ど・・・どうしたの? 急に顔が赤くなったけど・・・」
「な・・・何でもないわ!」
「そ・・・そう?熱は・・・大丈夫だな」
「う・・・うん。さ、いきましょ!」
ツーソンへの帰り道、ポーラはネスにある事を聞いてみようと思っていたのだった・・・
「ねえ・・・ネスは人の心が読める力って、欲しいと思う?」
「ぼくは人の心を読む力は欲しくないなぁ。もし、人の心を読んで、相手が黒い感情で一杯だったら嫌じゃない」
「!?」
「それに、ぼくは人の心は読めなくっても、ちゃんと心は通じ合えるって思うよ。だって、人って相手のために何かしてあげられるかなって考えるじゃない。心が読めちゃったら単なる作業になっちゃうよ」
「・・・私、小さいころね、いつからか人の考えていることがわかるようになっちゃったの・・・」
「ポーラ? それって・・・」
ポーラの突然の重い告白・・・ネスは恐怖で震えているポーラを支えつつ、話を聞いていた。
「『ツーソンの超能力少女だ』って周りははしゃぐんだけど・・・みんな私を使って・・・」
「お金儲けとか、そういうことを考える大人たちがポーラの力を求めてきた・・・」
「うん、それで幼稚園はいつもテレビ局の人たちでいっぱい・・・パパやママだけじゃなく、みんなにも迷惑かけちゃって・・・人と会うのが怖くなっちゃったの・・・」
(そっか・・・それで最初にポーラのパパが『テレビ局の人間か!?』って凄い剣幕で聞いてきたんだな)
「だったら、今度はぼくがそのテレビ局の連中を追い返すよ!」
「え?」
「だって、ポーラは一人の女の子として、すごしたいんでしょ? 嫌がる女の子を使ってお金儲けとか、やっちゃいけないことだから!」
普段はとっても温厚なネスが、こうも自分の事のように怒っているのは、正直な心なんだろう。今は『それ以外』の理由がわからないみたいだけど・・・
「あ・・・ネス・・・ネスは私のこと・・・怖くないの・・・?」
「ううん、だってポーラは優しい子じゃないか。 それに、幼稚園の子供たちにあんなに慕われているんだから、ね」
「あ、ありが・・・とう・・・私、こんな風に思われたの初めてだから・・・」
そう言ってポーラは溢れる涙が止まらない。 自分の事をここまで思われたのが凄く嬉しかったのだろう。泣き笑いの表情を浮かべていた
(ありがとう、ネス・・・ 私・・・)
「さ、みんなが待ってるからツーソンへ帰ろう」
「うん!」
(私、ネスを支えていきたい。 どんな小さくても、ネスを助けていきたい!)
「これがぼく達の旅の最初だったんだよ」
「パパって昔からとっても優しかったんだよ」
ここはポーラスター幼稚園・・・違うところといえば、冒険から長い年月が経っていて、ネスとポーラの間には姉弟がいると言うこと・・・そして、今はその姉に冒険談を聞かせているようだ。
(弟はまだ赤ん坊ということもあって、ぐっすり眠っている)
「じゃあ、ママにとってはパパはヒーローなんだね!」
「うん、私の、とっても素敵なヒーローなの!」
「パパ、顔真っ赤〜」
「うっ・・・面と向かって言われるとやっぱり照れちゃうよ、ポーラ」
夫婦になってもやっぱり恥ずかしいのか、赤面するネス こういう事にはあまり耐性が無いようだ・・・
「それにね、ぼくもポーラにいっぱい助けられたんだよ。 ジェフやプーにも随分助けられたけど、一番支えてくれたのはポーラなんだよ」
「パパ、その話ききた〜〜い!」
「うーん、今日はもう遅いからまた明日にしましょう」
「ハーーイ」
「それじゃ、おやすみなさい」
玄関を見ると、ネスたちの娘は、幼稚園の入り口に飾ってある花が笑っているように見えたのだ。
子供たちの寝顔を見て、ネスとポーラは『ポーラ(ネス)のような、暖かい人間に育って欲しい』と願っていたのだった。
「怖さしか知らない私を暖かい光へ導いてくれたのは、ネス あなたなの。」
ご感想
メカナイト様から頂きました、ネス×ポーラ小説でした。
ゲーム中でポーラが自分の力を怖がったりする描写はありませんが、実際にはこんな風に思っていたのかもしれませんね。
彼女にとって、ネスとの出会いはあらゆる意味で救いだったのでしょう。
素敵な小説をありがとうございました、メカナイト様。では。