〜エピソード29〜

 

 

 

 

 

 

 

「つまりだね、僕が集めた情報によると……」

手帳を片手にフォーサイドの街中を歩くジェフが、隣にいるネスに説明する。

「モノトリーと思わしき人物が、バー『ボルヘス』に出入りしているという話を複数人から聞いたんだ。まず、そこをあたってみようと思う」

「へえ。でも大人だったら、バーでお酒ぐらい飲むでしょ? 特に重要な場所って感じはしないけど」

「いや、それがそうでもないんだ」

ジェフは手帳をしまうと、首を横に振った。

「『ボルヘス』は街の外れにある。言っちゃあなんだけど寂れたバーなんだ。モノトリーみたいな権力者が、わざわざ出向くような場所じゃない」

「つまり、何か秘密があるかもしれないってこと?」

「そういうこと。……おっと、こっちを右だ」

完璧に把握しているらしく、ジェフは迷うことなく歩を進める。そんな彼の横を歩きながら、ネスは今の自分の心持ちを持て余していた。

何故か不気味なほどに落ち着いている。昨日散々泣いた為か、妙にスッキリした気分のように感じられる程だ。

勿論、怒りや悲しみが無くなったわけではない。ただそれが表立って出現しないだけ、といったところだろうか。

(なんだか変な気分だけど……気にしてられないよな)

半ば投げやりに心の中で呟きながら、ネスはジェフの案内に従って歩き続ける。

そして数分の時が過ぎたあたりで、ふと大勢の人々のざわつき声が前方から聞こえてきた。

「ん? 何かあったのかな? 人が一杯集まってるけど」

「野次馬っぽいけど、事故か喧嘩か……って、あそこだよ、バー『ボルヘス』は!」

「えっ!?」

言われてジェフが指差した先にネスが視線を向けると、確かにバーの看板を立てた建物が見える。そして、丁度そのすぐ横の空間に野次馬らしき人々の姿があった。

「まさか、モノトリーがいるの!?」

「いや、それは違うと思うけど……とにかく、行ってみよう」

「うん!」

二人はどちらともなく駆け出すと、一直線に人込みへと向かう。すると次第に、聞き取れなかった人々の話し声がハッキリと聞こえてきた。

「ああ、嫌だ嫌だ。あんな目には遭いたくないねえ」

「もう死んでるのかなあ?」

「いや、息はしてるみたいだよ。ただの酔っ払いじゃないかなあ」

どうやら誰かが行き倒れているらしい。騒ぐばかりで助けようともしない人々に少々不快感を覚えながら、ネス達は現場に辿り着く。

そして人込みの隙間から件の人物を確認した途端、ネスは心臓が大きく跳ねるのを感じた。

「ト、トンチキさん!?」

「えっ?」

「すみません、通してください!……トンチキさん、大丈夫ですか!?」

そう叫んだネスは乱暴に野次馬達を押しのけ、倒れている男へと駆け寄る。

全身ボロボロの状態ではあるが、その顔は間違いなくツーソンで出会った大泥棒のトンチキだった。荒い呼吸を漏らしていることから辛うじて生きてはいるようだが、重傷なのは明らかだ。

思わぬ再会に動揺を隠せないネスだったが、とにかく治療せねばとライフアップを試みる。

しかし、どういう事かいつもの様に上手くいかない。仄かな光こそ生まれるのだが、その光がトンチキを包み込んでも彼の傷が癒えないのだ。

「な、なんで!? どうしてだ……?」

「う……あ……こ、これは……ネ、ネスか……?」

「っ、トンチキさん! しっかりしてください! 今、治しますから!!」

トンチキの意識がある事に少しだけ安堵したネスは、再度ライフアップを試みる。だが、そんな彼を他ならぬトンチキが遮った。

「やめ……ろ……ネス……これは……ただの傷じゃない……お前の力でも……無理だ」

「?……ただの傷じゃないって、どういう……」

「ゼイ……ゼイ……あれだよ……あれ……覚えてるか?……“マニマニの悪魔”を……お前の言っていた黄金像……だよ」

「“マニマニの悪魔”……確かゲップーが言ってた……そうか、あの黄金像が……」

刹那、ネスの脳裏にあのおぞましい黄金像の姿が蘇る。

そういえばトンチキは、あの像を手に入れると言っていた。その結果がこれなのだろうか。

「俺はある筋から……あの像がこのフォーサイドにあると知った……モノトリーって奴が持ってる事もな……そして、奴から盗み出した……までは良かったんだが……ゼイゼイ……あれは、お宝なんかじゃなかった……あれは……ゲホゲホッ!」

「トンチキさん! もう喋らない方が……」

「いや……いい。それより……良く聞け。あれは……“マニマニの悪魔”は、恐ろしい代物だ。モノトリーはあれからパワーを得ていると思ってるだろうが……実際は逆だ。……あれはモノトリーを利用して何か恐ろしい事をしようとしている……だから、秘密を知る俺を消そうとした……結果はこの通り、あれの悪魔のパワーでこのザマって……わけさ……」

「悪魔の、パワー……」

「そう……だ……だから、お前の力も通用しない……あれ、そのものを壊さないと……いい、か……ネス……バー『ボルヘス』だ……」

「っ!」

「あそこの……カウンターだ。カウンターの中を……中にある瓶を調べるんだ……そこに……」

「お待たせしました、救急隊です。この方ですね」

誰かが通報していたのだろう。担架を抱えた二人の救急隊が駆け寄ってくると、ネスを押しのけるようにしてトンチキの搬送に取り掛かる。

その手際は少しの無駄もない見事なものだったが、ネスはその様子に何処か違和感を覚えた。

しかし、それを口にするより先に、トンチキの搬送が始まる。救急隊は「通してください」と声を張り上げて野次馬を追い払いながら、救急車に乗り込んでいった。

後に残されたネスが呆然とその光景を見送っていると、ジェフが野次馬の間を搔い潜って近寄ってくる。

「ネ、ネス。今運ばれていった人と知り合いなのかい?」

「え? あ……うん、まあ、ね。ちょっと前に、お世話になったんだ」

「へえ、あの人とね。言っちゃ悪いが、堅気の人には見えなかったけどなあ。それにあの怪我、単なる事故とは思えないし」

「うん、トンチキさんは巻き込まれたんだ。多分……モノトリーに」

「何っ!? どういうことだよ、ネス!?」

「っ……行けば分かると思う。行こう、ジェフ」

そう言うや否や、ネスはジェフの返事も待たずに駆け出す。そして疎らになった野次馬達に眼もくれずにバー『ボルヘス』に飛び込んだ。

すると当然と言うべきか中にいたのは大人ばかりで、入ってきた子供であるネスに訝しの視線を向ける。

だがネスはそれを気にすることもなく、真っすぐにカウンターへと歩を進めた。

「な、なんだい君は!? こ、此処は子供の来る場所じゃないぞ!」

マスターが怯えた様子で注意するが、勿論それをきくネスではない。むしろ、そんなマスターの様子から、益々トンチキの言葉の信憑性が増してくるのを感じた。

「ネ、ネス! 一人で勝手に行くなっての!」

「……ジェフ、こっちに来て」

「え? ど、どうしたんだ?」

「いいから、こっち」

追いかけてきたジェフに眼もくれずにそう言いながら、ネスはカウンターの中に入る。

そして怯えているマスターを横目に、棚に並べてある数本の瓶を睨みつけた。

(この中のどれか……どれだ?……っ、これか!)

並べられた瓶達を注視していた彼は、その中の一本を手に取る。すると派手な音と共にバックバーの一部分が動き出した。

「うわっ! ネ、ネス、なんだよ、これ!?」

「やっぱり、ここにモノトリーの秘密が…………っ!?」

刹那、ネスは眼前の景色が歪むのを感じた。思わずよろめいた視界の端で、ジェフも同じようによろめている姿が映る。

そんな彼に声を掛けようとするより先に、歪んだ景色がグルグルと回りだし、ネスの意識は遠のいていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何処からか耳障りな音楽が聞こえてくる。

不快さによって意識を取り戻したネスは、重い頭を抱えながら身を起こした。

「うう……な、なんだよ、この滅茶苦茶な曲は……うわっ!?」

眼を開けて周囲を見渡したネスは、今自分がいる場所の異様さに思わず声を上げる。

室内にもかかわらず、辺り一面に派手なネオンが輝いている。内装そのものは先程までいたバー『ボルヘス』と似通っているが、自分達以外には誰もおらず、とても同じ場所だとは思えない。

一体、何が起こったのか。ネスはそんな疑問に支配されつつも、隣で倒れているジェフに気づき、急いで彼を起こした。

「ジェフ! ジェフ! しっかりして!」

「う……う〜ん……ネ、ネス、なんだこの不愉快な音楽……って、何処だ此処は!?」

目覚めるなりジェフは、先刻のネスと同じ反応を示す。

「僕にも分からない。確か僕達、カウンターの中に入って、そこを調べたんだよね?」

「ああ。君が瓶の一つを取ったら、バックバーが動き出して……そこで記憶が途絶えてるな」

「もしかして僕達、何処か別の場所にワープしたのかな。ここ、『ボルヘス』じゃないよね? 似てるけど……」

改めて周囲を見渡しながら、ネスは自信なさ気に呟く。そんな彼に、ジェフは難しい表情で首を横に振った。

「どうだろうな。とにかく、一旦外に出ないか? このネオンといい、この音楽といい、いつまでも此処にいると気が変になりそうだ」

「そ、そうだね。僕もこんな所に、ずっといたくないよ」

意見が一致した二人は、我先にと出口へと向かい外に出た。が、その次の瞬間揃って眼を見開いて硬直してしまう。なぜなら、建物の外もまた異様な光景だったからだ。

街並みはフォーサイドと似通っているが、至る所でネオンが輝いて不気味な雰囲気を漂わせている。

加えてどういうわけか、空が夜のように真っ暗だった。いや、“夜のよう”というのには語弊がある。月や小さな星の輝きさえ見えない、漆黒の闇が広がっていた。

極めつけに外に出たのにも関わらず、あの不愉快な音楽が続いている。さながら別世界としか思えない場所にいるのだと、ネス達は考えるしかなかった。

「な、なんだなんだ、此処は!? 本気で頭がおかしくなりそうだぜ……」

「違う場所にワープしちゃったのかな?……あ、誰かいる。聞いてみよう!」

焦りながら周囲に視線を飛ばしていたネスは、一人の通行人を見つけると、藁にも縋るような気持ちで駆け寄る。

「あ、あの、すいません!」

「……」

「っ!?」

振り向いた通行人―—中年女性の顔を見て、ネスは思わず息を呑んだ。

明らかに眼が普通ではない。虚ろながらも何処か狂気を感じる二つの瞳は、本能的な恐怖を与えてくる。

無意識に後退りしてしまったネスだったが、そんな彼に追い打ちをかけるように女性は口を開いた。

「ようこそムーンサイドへ。ようこそムーンサイドへ」

「ム、ムーンサイド?」

「よう、こそムー、そムー、ンサイ、ンサイ、ンサイ……ドへ」

「え?……え?」

「ンサイ、ンサイ、ンサイドムー、こそよう、こそよう、こそよう。ムムーーンンササイイドドへへよよううここそそ」

「う、うわああっ!?」

意味不明な言葉を呟き続ける女性から、ネスは悲鳴を上げながら離れる。そのままジェフの元へと戻ろうとしたのだが、直後向こうからも悲鳴が聞こえてきた。

「ネ、ネス! こ、こいつら何とかしてくれ!」

「えっ!? な、なに!?」

「あ、あれだよ! あれ!!」

ジェフはこちらに走りながら自らの後方を指差す。その先を見やったネスの眼に映ったのは、巨大な絵画と時計だった。時折ジェフが銃撃を加えているが、まるでダメージを受けた様子を見せない。

加えて明確に彼を追ってきているそれらは、どうみても怪物であった。しかし、先程異常極まりない人間を目の当たりにしたばかりのネスには、幾分か恐怖が薄らいで感じられた。

なので彼は素早く精神集中し“PKドラグーンβ”を放つ。直後迸った七色の光は、二体の怪物を粉々に砕いた。

だが、それに息をつく暇もなく、ネスは遠くに同じような怪物が無数にいるのを眼にする。そして、それらがこちらに接近してきている事に気づくと、大急ぎでジェフの手を取った。

「逃げようジェフ! こんな奴ら、一々相手してられない!」

「い、異議なし!!」

即答したジェフと共に、ネスは大急ぎでその場から駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあっ……はあっ……ジェフ、大丈夫?」

「な、なんとか……しかし、本当に此処は何処なんだよ?」

街外れの木陰で互いに荒い息を吐きながら、ネスとジェフは休憩を取っている。

その身体には至る処に傷があり、顔には多くの汗粒が浮かんでいた。それもその筈で、二人は連戦に次ぐ連戦をようやく潜り抜けたばかりだったのである。

街中だというのに、我が物顔であの得体の知れない怪物たちが無数に徘徊しており、気づかれると例外なく襲い掛かってくる。しかもスリークの時とは違い、街の住人達も平気で出歩いているのだ。

これでは思うように戦う事が出来ず、細心の注意を払いながらの戦闘を強いられ、単純な敵の強さ以上に疲労と傷が蓄積されていく。

住人も住人で、揃いも揃って虚ろな表情で意味不明な言葉を並べ立てるばかりときている。これでは心身共に摺り減らされていくのも当然で、たまらず二人は身体を休めているのであった。

「ふう……僕にもサッパリだ。確かムーンサイドって言ってる人がいたけど、それがどういう意味なのか分からないし」

「ああ。そもそも、どうにも会話が成立していない人ばっかりだからな、この街は。なんでもいいから、早くフォーサイドに戻りたいぜ」

「うん、そうだね。でも、どうやったら『ボルヘス』に戻れるのか……っ!? あ、あれって……!?」

「?……どうしたんだ、ネス?」

「あ、あれだよ、ジェフ! あのビルの入り口!!」

ネスは興奮しながら視界の先―—モノトリービルと酷似したビルの入り口を指差す。そこには禍々しい輝きを放つ像が、まるで番人のように置かれている。そして彼には、その像に見覚えがあった。

――――間違いない。“マニマニの悪魔”である。

「ビルの入り口って……あの像か? あの像がどうしたんだ?」

「あれだよ、あれが“マニマニの悪魔”なんだ! 多分、あれを壊しさえすれば……ジェフ、行こう!」

「え、あ、お、おう!……っ! いや、待ったネス! 誰か来る!」

「えっ?」

飛び出そうとしたネスは、ジェフの言葉に足を止める。するとその直後、ビルの傍から一つの人影が姿を見せた。

遠くであること、そして今いる世界全体が暗い事も手伝ってハッキリとは見えないが、どうやら男性らしい。

どことなく怯えた様子で“マニマニの悪魔”に近寄ったその男性は、まるで神に祈りを捧げるような仕草で跪く。それを見たジェフが、ハッと息を呑んだ。

「まさか、あれ……モノトリーじゃないのか?」

「!」

瞬間、ネスの中で何かが沸騰し、一気に外へと噴き出した。

頭で考えるよりも先に駆け出した彼は、怒りで顔を歪ませながら叫ぶ。

「モノトリー! ポーラを何処へやったんだ!!」

「っ!?」

ネスの怒号に驚いた男性が振り返る。完全に怯え切ったその表情は、彼がモノモッチ・モノトリーである事を示していた。

「ち、違う! わ、私はモノトリーなんかじゃない!」

「なにを!!」

モノトリーの言葉に激高したネスは、反射的に“PKドラグーン”を試みる。一切の手加減も無く放たれた七色の光は、即座にモノトリーの身体を貫くと思われた。

が、次の瞬間、どういう訳かモノトリーの姿が煙のように消え去り、“PKドラグーン”は彼の後ろにあった“マニマニの悪魔”に命中する。

すると、この世界に来た時と同じ感覚―—世界が歪む感覚がネスを襲った。そしてあの時と同じように、彼の意識を遠のいていってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ス……ネス! しっかりしてくれ!」

「?……ジェフ?」

ジェフの呼び掛けと身体の揺すりに、ネスは意識を取り戻す。

ボンヤリとした頭を抱えながら眼を開けた彼の眼に映ったのは、何処かの倉庫らしき光景だった。

「あれ? ここは? 僕達、さっきまで変な世界に……」

「答えはこれさ」

ネスの言葉を遮って、ジェフはある一点を指差す。その先には、粉々になった黄金像―—“マニマニの悪魔”の残骸が散らばっていた。

「これは……っ、そっか。僕、あの時これに“PKドラグーン”を……え? いや、だから、どういう事なんだ……?」

「まあ大半は推測になるけど、こういうことだと僕は思っている。この“マニマニの悪魔”は、一種の幻覚装置だったんだよ」

「幻覚……装置?」

聞き慣れぬ言葉に眼を瞬かせたネスに、ジェフは頷きながら残骸の一つを手に取って凝視する。

「バラバラになってるけど、見たこともないパーツばかりだ。ちょっと前の僕だったら、ただの珍しい品だと片付けていただろう。でも今は、違う。恐らくこれは……」

そこで言葉を切ったジェフは、真剣な表情でネスを見た。

「ギーグが作ったもの、と考えるのが自然じゃないかな。僕はまだ見た事ないけど、君は今までにロボットやUFOと戦った事があるんだろう? 前に話してくれたじゃないか」

「え? あ、うん。ポーラを助けに行った時に、何体か……っ……そっか、ロボットとかが作れるんなら、他のマシーンも作れて不思議じゃない、か」

「そういうこと。ま、僕も幻覚装置なんて今まで見た事も聞いた事もないから断言は出来ないけどね。しかし、あれらを見れば、そう判断せざるを得ないさ」

「あれら?」

「そう、あれら」

苦笑交じりにそう言ったジェフは、再びある一点を指差す。その先には派手に破損した木箱達があり、その中から様々な物体が姿を見せている。

それらに見覚えがあったネスは、思わず息を呑んだ。

「っ、僕達がさっきまで戦ってた奴ら? お、玩具だったの?」

「玩具と言うか、ただのガラクタと言うか……とにかく、僕らは戦っているようで戦っていなかったのさ。現に、少しも怪我なんかしてないしな」

言われてネスは自身の身体を確かめてみるが、確かに擦り傷一つもなく、疲労もまるで感じられない。先程までは、あんなに疲れと痛みを感じていたのにも関わらずだ。

「確かに、全部幻だったって思えてくるな」

「そういう事。もし此処に他の誰かがいたら、さぞ奇怪な眼で見られてただろうな。ガラクタに向かって、銃やらバットやら向けている男子二人が徘徊してたんだから」

「うわあ、それは我ながらきついかな」

不気味な自分達を想像してしまい、ネスは思わず苦笑する。が、それも束の間、再び破壊された“マニマニの悪魔”に視線を向けた。

「……トンチキさんは、モノトリーはこれからパワーを得ていると言っていた。悪魔のパワーを」

「へえ、悪魔のパワーねえ。どんなものか想像も出来ないけど、これが壊れた今、彼は多少なりとも弱体化していると考えていいだろう。……チャンスかもな」

「うん。此処を出たら、もう一度モノトリービルに行ってみよう。少しでも早く、ポーラを助けないと」

「了解。まっ、いつまでも後手に回ってるのも癪だしな。今度はこっちの番といこうぜ」

そう不敵に笑ったジェフに、ネスは唇を噛み締めながら力強く頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


  

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