〜エピソード32〜

 

 

 

 

ジリジリと全身の肌を焼き付ける、灼熱の太陽。

あの砂漠でのものと比べれば幾分マシとはいえ、雪国暮らしのジェフにとって辛い事に変わりなかった。

可能な限り日陰を移動しながら、彼は覚束ない足取りでホテルへと進む。そしてようやくエントランスに辿り着いた時、タイミングよく中からネスとポーラが顔を見せた。

「あ、ジェフ、おかえり。そろそろ様子を見に行こうと思ってたんだよ」

「お疲れ様。暑くて大変だったでしょう。それで、首尾は?」

「あ、ああ……まあ、色々……だけど、とりあえず部屋に行こうぜ。……暑いし喉がカラカラなんだ」

「ゴ、ゴメン! そりゃそうだよね! じゃあ早く行こう。流石リゾートホテルだけあって部屋の中は涼いし、ドリンクも一杯あるよ」

バツが悪そうに謝ったネスは、ジェフに荷物を半ば奪い取るように預かる。そして足早にホテルの中へと駆けて行った彼の後姿に、ポーラが苦笑してみせる。

「クス、ネスってば。……さ、行きましょう、ジェフ。せっかくネスが上等な部屋を取ってくれたんだし、堪能しなきゃ」

「そうだな。せっかくのリゾート、だもんな」

ジェフは笑みと共にそう頷き、ポーラと共にネスの後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

現在彼らは、フォギーランドが誇るリゾート地サマーズを訪れていた。

無論、バカンスで訪れたわけではなく、モノトリーが“マニマニの悪魔”から聞いた言葉に従い、今後の旅の手掛かりを見つけに来たのである。

実の所、此処サマーズにやってくるだけでも、中々に多くの出来事があり大変であったものだ。

ポーラの予知能力を信じてスリークに戻ってみれば、町の人々から墓場にほったらかしにしていた“スカイウォーカー”の処理に困っているという話を聞かされる。

気になって現場に向かってみれば、数人がマシンを取り囲み、揃って難しい顔をしていた。

訊けばどうにかしてこのマシンを再利用できないかと、あるだけのジャンク品を携えてやってきたものの、ハイテク過ぎて修理の仕方がまるでわからないとの事であった。

ならばと声を上げたのは当然というべきかジェフであり、「これを使えばサマーズに向かえるかも」と早速“スカイウォーカー”の修理に取り掛かった。

曰く「壊れてはいるが大したことない。修理の材料が揃っている今ならすぐに直せる」とのことであった。そしてその言葉通り、一時間と経たない内に彼は修理を終えてしまった。

しかし直るには直ったものの、このままではサマーズに行く事は不可能だとジェフは告げる。どういう事かとネスが訊ねると、ジェフは少し悔しそうな顔で答えた。

「今、このスカイウォーカーは此処スリークとウィンターズ間を往復するようにプログラムされているんだ。残念だけど、そのプログラムを変更するにはそれなりの設備がいる。つまり、一旦ウィンターズのパ……アンドーナツ博士の研究所に戻る必要があるって事さ」

その言葉を信じるしかなかったネスとポーラは、ジェフと共に“スカイウォーカー”に乗り込みウィンターズに向かった。

そして辿り着いた研究所でアンドーナツ博士と出会い、事の次第を説明すると快くマシンの改造を引き受けてくれた。

それが終わるまで暫しの休息とするつもりだった三人だが、不意にある事を思い出したジェフによって予定が変わる。

「ドコドコ砂漠で言おうとして有耶無耶になってしまってたんだけど、実は君達と合流する前に、ネスの場所だと思われる場所を此処ウィンターズで見つけていたんだ。丁度他にやる事も無いんだし、調べてみないか?」

当然その提案を断る理由はネスに無く、早速ジェフの案内で『お前の場所』と思わしき場所へと向かった。

アンドーナツ博士の研究所からすぐ近くの洞窟内にあったその場所には、既に見慣れた銀色の塊。紛れもなく『お前の場所』だった。

その四つ目の『お前の場所』に陣取っていたのは、巨大なキノコの化け物。

三つ目の場所を守っていた植物の化け物と同じくらい不気味且つ厄介な相手であったが、三人の力を合わせて撃破する事が出来た。

そして先に進んだ三人の眼に映ったのは、常に雨が降り続けている円形の地形。それを見たジェフが『レイニーサークル』と独り言のように呟いた。

雪国であるウィンターズにおいて、唯一雨が降るという幻の場所で、彼も噂でしか知らなかったらしい。

そんな『レイニーサークル』で、ネスは例によって“音の石”にメロディを記憶する。一瞬ハンバーグの匂いを感じながら記憶したその音楽は、彼の不安定になっていた心を癒してくれた。

暫くぶりの清々しい気持ちでネスが研究所に戻ると、タイミング良くマシンの改造が終わっており、一行は時を待たずにサマーズへと向かったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あ〜〜生き返る〜〜! 外に比べて、此処は天国だな!」

空調の効いたホテルの一室で、ジェフはドリンクを一気飲みした後に感極まって叫ぶ。そんな彼の持つグラスに、ネスがお代わりを注ぎながら労りの言葉を掛けた。

「本当にご苦労様。情報収集、上手くいったみたいで良かったよ」

「まあな。やっぱりトトっていう港町にまで足を伸ばしたのが正解だったよ。色々と有用な話が聞けた」

「あら、そんな所にまで行っていたの?……でもまあ、仕方ないかしら。サマーズは観光地だもの。みんな遊びに来ているわけだし、情報収集には不向きよね」

こちらも同じくドリンクを飲みながら、ポーラが呟く。そんな彼女に、ネスが苦笑してみせた。

「本当。出来れば僕らも観光で来たかったよね。海で泳いだり、レストランでご馳走食べたり」

「まあネスってば。ダメじゃない、貴方がそんなんじゃ。」

「分かってるって。言ってみただけだよ」

ポーラの窘めにネスが軽口を返し、それに対してポーラは「本当かしら?」と呆れたように微笑む。

そんな二人の遣り取りを眺めていたジェフは、二人に気づかれない様に小さく笑った。

(どうにか、元通りになった……かな? ま、良い事だし、詳細は訊かないでおくか)

フォーサイドでのギクシャクした雰囲気が随分と薄れているのを感じ、彼はそんな感想を抱く。

スリークで初めて会った頃の和やかな雰囲気で、常に身近にいる者としてはありがたい事だ。自分の算段が実を結んだのだと思うと、嬉しさが込みあげてくるというものである。

(今後の道しるべも見つかったし、上々ってとこか。フォーサイドでのようなあれこれは、無いと思っていいかな)

サマーズに到着し、ひとまずホテルにチェックインした彼らは、それぞれベッドに腰掛けながら今後の予定を話し合った。

まずネスが街で各自分かれて情報収集したいと言い出し、ポーラもそれに賛同したのだが、ジェフは丁寧にその案を否定した。

なぜなら彼にとってネスの案は、フォーサイドでの二の舞になる気がしてならなかったからである。

勿論、それをそのまま口にする程デリカシーの無いジェフではない。「色々あったんだから、二人は暫くのんびり骨休みしててくれ」と、一人で情報収集役を買って出たのである。

ネスにせよポーラにせよ、フォーサイドで色々と問題に巻き込まれ、かなり精神的に負担がかかっているのがジェフには感じ取れた。

それに加えて、未だ二人の間にぎこちないものが漂っているようにも思われ、休息の機会が必要だと彼はずっと考えていたのである。その矢先にやってきたのが、ここサマーズだ。

これ以上ない機会だと判断したジェフは、多少無理やりにでも二人を休ませ、あわよくば関係の修復もしてくれればと思った。その上での、情報収集役の申し出である。

当然ながらネスもポーラもすぐに首を縦に振る事はなかったが、そこは粘り強く説得して最終的にはどうにか納得してもらえた。

そうして二人を休ませる事に成功したジェフは、暑さに悩まされながらもサマーズに情報収集へ繰り出したのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……で、僕が集めた情報によるとだね……」

一頻りドリンクと空調で涼んだ後、ジェフはびっしりと書きこんだ手帳を確認しながら、ネスとポーラに向けて言った。

「とりあえず、このサマーズで今までの町のようなトラブルは確認できなかった。暫定的ではあるけど、まあ問題無しって思っていいだろう」

「そうなの? でも、モノトリーさんの話を信じるなら、此処に何かある筈なんだけど……」

「まあ、落ち着けってネス。有用な話が聞けたって、さっき言ったろ? まず、その内の一つ目だけど……此処サマーズの隣、港町トトからスカラビって所への船が出ているんだ」

「スカラビ?」

聞き慣れない地名に、ネスが眼を瞬かせると、ジェフは大きく頷いた。

「僕も初めて聞いた土地だけど、ドコドコ砂漠と同じような灼熱の土地なんだってさ。色々と探検スポットがあって、世界各地から冒険家がやってくるそうだ。そして……」

一旦言葉を切った彼は、ネスとポーラを順に一瞥した後、強調して言う。

「一際有名なスポットに、巨大なピラミッドがあるらしい」

「「!!」」

ジェフの言葉に、二人は揃って息を呑む。

――――ピラミッドを見せるな。

モノトリーが“マニマニの悪魔”から聞いた言葉の一つである。となれば、次の目的地は決まったも同然だった。

「じゃあ、僕達はスカラビに行くべきなんだな」

「ああ。それにまだ気になる話はある。此処には博物館があって少し寄ってみたんだけど、そこに騒がしい太った男子が数時間前までいたらしい」

「!?……まさか、ポーキーの事?」

「その可能性は高いだろうな。どうも大金を出して気に入った展示物を買い取ろうとしていたんだそうだ。そして満足すると『今度はスカラビに行くか』と言って帰ったらしい」

「っ……だったら猶更、スカラビに行かなきゃな。よし、名残惜しいけど早速チェックアウトしてスカラビに……」

「悪い、ネス。水を差すようだが、今それは難しいんだ」

「え? 難しいって?」

キョトンとした顔で訊ねてきたネスに、ジェフは苦々しい顔で溜息をつく。

「現在スカラビの海路には、クラーケンという怪物が徘徊しているそうだ。巨大な蛇の姿をした怪物で、火を吹くわ電気を放つわと危険極まりない存在らしい。だからスカラビへの船は、ほぼ欠航している。みんなクラーケンが怖いみたいだ。ま、話を聞く限り、無理もないけどな」

「そ、そんな生物がいるの……?」

両手で自身を抱きしめながら、ポーラが身震いする。そんな彼女の隣で、ネスが暫し考える仕草をした後、何かを案を思いついたらしく声を上げた。

「だったら僕らで、その怪物を倒せば船を出してもらえるんじゃ……?」

「ああ、僕もそう思った。だから船乗りの人達にそう言ったんだけど、殆ど相手にしてもらえなかったよ。子供の冗談だってな」

「まあ……それは、そうかな。やっぱり」

「でも一人だけ、話を聞いてくれる人がいたぜ。『その気になれば船を出してやらなくもない』ってね」

「ん? それ、どういう意味?」

「いや、それが……」

難しい表情で、ジェフは視線を逸らす。そんな彼に、ネスとポーラは不思議そうに声を掛けた。

「どうしたの、ジェフ?」

「その船乗りさんと、何かあったの?」

「その……その人、今奥さんと上手くいってないらしくてさ……」

「え? お、奥さんと?」

「ああ。何でも変な店に入り浸るようになって、商売もしなくなった挙句話が全然合わなくなってしまったんだとさ。それでイマイチ船を出す気になれないそうだ。逆に言えば……」

「奥さんが元通りになれば、船を出してもらえるわけか」

「正解」

「それで、その奥さんが入り浸ってる変な店って?」

「“ストイッククラブ”っていう店だよ。ここサマーズの博物館の隣にある。完全予約制の店らしいんだけど、予約用の電話番号は聞いてきたから、入ろうと思えば入れるぜ」

「へえ、流石ジェフだね。手際が良い。じゃあ早速、その店に行こうよ」

「了解。それじゃ、予約してくるか。ちょっと待っててくれ」

そう言ってジェフは腰を上げると、電話をする為に部屋を出ていく。その後姿を見送ったネスとポーラは、どちらからともなく顔を見合わせた。

「夫婦間の執り成しか……僕らに出来るかな?」

「今悩んでも仕方ないわ。とりあえず、その奥さんに会ってみないと。ね?」

「……そうだね」

励ますようなポーラの微笑みに、ネスは苦笑交じりに頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから暫くしてホテルから出発した一行は、ジェフの先導によって“ストイッククラブ”へやってきていた。

受付でジェフが名を述べると、スタッフが予約の確認をし、程なくしてクラブの中へと案内してくれた。

だが、案内された部屋へ入った途端、三人は異様な光景に思わず立ちすくんでしまった。

「つまり、今の世界ではエントロピーの増大っていう流れに抗うことは、膨張する宇宙を否定し続ける意思が表明されているってこと……」

「資本主義の最終イメージを想像することさえもしないで生きるということは……」

「この絶対矛盾的自己同一性を解決するには……」

誰もかれもが小難しい事をしきりに喋っており、その視線はステージ上にある石に向けられている。

会話をしているのか、それともただの独り言なのか。それすらも判別できない程に、各自が好き勝手に喋り続けているだけの空間だった。

「あら、あんた達、新しい人?」

ふと声を掛けられてネスが振り向くと、呆れた様子のウエイトレスが幾つものグラスを乗せたトレイを片手に立っていた。

「あ、あの、この人達、何をしているんですか?」

ネスが訊ねると、ウエイトレスは盛大に溜息をつく。

「……ショーよ」

「ショー?」

「そ。ステージの石を見つめて色々哲学するのよ。……くだらないでしょ?」

「え? え、ええ、まあ……」

まるで理解できない話に、ネスは顔を引きつらせる。そんな彼に、ウエイトレスはグラスを一杯差し出した。

「ま、とりあえず飲んだら? ただの水だし」

「み、水?」

「そ。水だけ飲んで小難しい話をしたいだけして、最後に高い室料を払って帰っていくのが此処の人達なの。楽な仕事で、こっちは助かるけどね」

「は、はあ……」

おずおずとネスがグラスを受け取り、次いでジェフとポーラも同じように受けとると、揃って口へ運ぶ。確かに別段変わったところのない、ただの水だった。

「私が言うのもなんだけど、こんな所に長居しない方がいいわよ、あんた達。それ飲んだら、さっさと帰った方がいいわ。それなら室料も払わなくて済むし」

そう言い残すと、ウエイトレスは他の客に水を渡すべくその場を立ち去る。後に残された三人はグラスの水を飲みながら、周りに聞こえないよう小声で話し始めた。

「確かに変な店だね、此処」

「ええ。あまり悪口は言いたくないけれど……此処にいる人達、ちょっと普通じゃないわ」

「そうだな。こんな所に入り浸ってちゃ、気が変になっても不思議じゃない。……あの船乗りの気苦労がわかるよ」

「そういえばジェフ、その船乗りさんの奥さんって、誰だが分かるの?」

「大丈夫、ちゃんと特徴は訊いてきてるさ。ええっと……あ、あの人だよ」

キョロキョロと周りを見渡したジェフは、クラブ内の隅でリラックスした様子で水を飲んでいる金髪の女性を指差す。すると、その女性を見たポーラが驚きの声を上げた。

「嘘!? あの人なの!?」

「え? ポーラ、知り合い?」

「いえ、知り合いというか……そうか、少し前から広告を見なくなったのは、これが理由だったのね」

「おいおい、ポーラ。一人で納得してないで、僕らに説明してくれよ。あの船乗りの奥さん、有名人なのかい?」

「え、ええ。あの人、世界で唯一の“マジックケーキ”職人なの。広告とか雑誌で、何度か見たことあるわ」

「マジックケーキ?」

「『幻想的な甘美が織りなす、芸術品の域に達したケーキ』というキャッチコピーのケーキよ。とっても美味しいらしいんだけど、一つ一つ手作りだから販売数も少ないし、通販もしていないから中々食べられないの」

「へえ、それは凄そうだな。しかし、そんな好評だった商売を止めて此処に入り浸っているって事は、もう嫌気が差しているんじゃないか? そのマジックケーキ作りに」

「……かもしれないわね。でも、とにかく話をしてみないと。船乗りさんが可哀想だわ」

「そうだね。それに僕らも困るんだし。……よし、話してみよう」

「ええ」

「了解」

意を決したネス達は、徐にマジックケーキ職人に近づく。すると予想外に、向こうから声を掛けられた。

「あら貴方達、新しい会員さん?」

「え? あ、いや、えっと……」

ネスが返答に困っているのを、職人は勝手に納得した様子で喋り続ける。

「まだ小さいのに、このクラブの良さが分かるなんて凄いじゃない。わたし、やっとこの頃自意識に目覚めたと言っていいと思うの。このクラブの人達って自己の存在を穴があくほど見つめていて……私、穴があきそうに心地いい自己よ。四六時中も五六時中もこの店に存在していたいわ」

「い、いえ、その……」

マシンガントークというものだろうか。凄まじい勢いで言葉を並べていく彼女に、ネスは口を挟めない。と、それを見兼ねたポーラが珍しく大きな声を張り上げた。

「あ、あの! 私達、マジックケーキが欲しいんですけど……!」

「……え?」

すると途端、職人の眼の色が変わる。夢から覚めたような表情になった彼女は、まじまじとポーラの顔を見つめると、呟くように言った。

「あら、貴女……昔TVで見たような……確かポーラちゃん、だったかしら?」

「は、はい」

「え……ちょっと待って。確か貴女って、イーグルランドのツーソンに住んでるんじゃ……?」

「そ、そうです。……あ、こっちの二人はオネットとウィンターズから来たんです」

何かを思いついた仕草の後、ポーラは唐突にネスとジェフの出身地を述べる。すると職人は大きく眼を見開き、ややあって上擦った声を出した。

「姉妹都市のウィンターズはともかく、ツーソンにオネットって……そ、そんな遠くから私のマジックケーキが食べたくて、わざわざ此処サマーズまで?」

「……はい」

ポーラが頷くと、職人はハッと息を呑んだ。そして暫くオロオロとしていたが、やがて「そ、そう……」と呟くと、持っていたグラスの中の水を一気飲みする。

そして小さく被りを振った後、諦めがついたような、或いは吹っ切れたような笑みを三人に向けた。

「じゃあ暫くしたら……そうね、一時間くらい経ったら、ビーチのワゴンまでいらっしゃい。のぼり旗を立てておくから、すぐに分かるから」

職人はそう言い残すと、足早に三人の横を通り過ぎてクラブを出ていった。

「上手くいったみたいだね」

彼女の姿が見えなくなった後にネスが笑いながら呟くと、ポーラとジェフもつられるように笑みを零しながら相槌を打った。

「ええ。どうやら仕事への熱意を失くしていたわけじゃないみたい。良かったわ」

「ま、これでどうにか元通りになってくれるだろうよ。さて、それじゃ何処かで暇を潰そうぜ。良い機会だし、少しくらいリゾート気分になっても構わないさ」

ジェフの言葉に反論する必要は何処にもなく、ネスとポーラはとびきりの笑顔で「「賛成!」」と頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


  

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